犬を飼うのは大変じゃない?(1) トイプードルを飼うには
前記事で主人公として登場してきたトイプードルのモコ。
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彼女が購入され、我が家の一員となったときの記事が見つかったので大幅リライトしました。
目次
ちょうど6年前、チーが保育園を卒園し、新1年生となった頃の話です。
犬を飼う運動を始める
チーが新1年生になった頃。
動物大好きチーは、「志村動物園」なんかもよく観てて、以前から
「犬がほしい」「犬を飼う」
と騒ぎたてていた。
最初のうちは、うちの2姉妹ナナ(当時6年生)とチーの面倒見だけでも大変なのに、これ以上メンドウクサイやつを増やしてなるものか、と、だれもあまり取り合わなかった。
しかしここ最近、「犬を飼うのもいいのでは」という空気、というか方向、というか、なんだか皆が「犬を飼いたいチー」に影響されはじめた。
舵は切られた。
船は動き始めた。
うちの人間、嫁さん、婆さんが、そして爺さんまでもが
「チーの新一年生のお祝いに、ね」
「チーはこれからカギっ子になるわけだし、犬がいたほうが淋しくないよ、ね」
「犬の面倒をチーが見るようにすれば、責任感のある子に育つよ、ね」
と、なんだかわからないが皆が ね、ね、ね、と言い出した。
そして「お父さんもちゃんと働きだしたし、ね、ね」と、ね、ね、は二段活用され、まだ幼いチーの「犬を飼う」というけなげなマイノリティな運動は、なんと、家族全員を動かし始め、マジョリティとなってしまった。
ぼくの過去の入院騒ぎ(うつとアルコール依存症)で赤字経営だったふく家が、ここ最近やっとのことで黒字転換しつつあるというのに。
ギリギリ、カツカツ、の運転資金でなんとかまわっている ふく家が、ここで「犬」ごときに出資し、来年度赤字なんてことになってはたまらない。
犬・特別会計を予算取りして、歳入より歳出が膨らんでしまってはかなわない。
犬を飼うのは大変じゃない?
これはイカン、なんとかせねば。
群集の興味を、犬以外の何かにそらさなければ。
群集の興味をほかにそらすには、革命のリーダーの興味をほかのモノへそらすしかない。
言いだしっぺをなんとかせねば。
その言いだしっぺチーは、ほかの家族には強気で「犬を飼って!」「犬を飼って!」と犬購買運動を続けている。
しかしどうやら、犬を飼うには父さんに「YES.」と言わせなければならないことを察知したらしい。
(そのころぼくはしっかり働いていたため、膨大な権力をもっていた)
チーは、慎重にこちらへアプローチしてきた。
「とーぅ さん♪」
「ん。」
「あのね、」
「うん」
「いぬ、かって・・・・・・ほしいなっ♪」
「うううーん・・・・・・」
神妙な上目づかいでじっとこちらを見つめつづける小さな女の子に、思わず
「チーがそう言うんなら、飼おうか。」
と出かかったが、なんとかのど元でおさえた。
(顔がずいぶん変わったので、顔出しOK)
おちつけ、オレ。
その手にはのらないぞ。
いいか、まずは犬を飼うとなると、エサ、さんぽ、トイレ、しつけなど大量の人件コストがのしかかってくることになる。
犬を飼うのは大変だ。
ギリギリ、カツカツでまわっているふく家はそれに持ちこたえられない可能性もある。
犬一匹でふく家てんぷく、となってしまわないこともない。
ふく家てんぷく、一家離散、となってしまわないこともない。
一家離散、両親離婚、子どもは施設に預けられ、となってしまわないこともない。
そしてお父さんはそのショックでお酒に手を出し、飲んだくれたあげく、ひとり寂しく孤独死、となってしまうかもしれない。
チーは施設に入り、いじめに合い、家族ばらばらこうなったのは私の責任、と飛び降りてしまうかもしれない。
やはり、犬を飼うのは大変だ。
皆が犬を飼う準備をしていた
そんなお父さんの心配をよそに、犬・購買多数派は裏でひそかに事を進行させていた。
そして、ぼくが忙しく仕事をしている間に、家から電話がかかってきた。
「あんたの持ってるクレジットカード、JCBは使えるんかいね」
「は? え? なんのこと? 使えるけど。 それが何か?」
「はいはーい。 オッケーね」
(当時はまだクレジットカード持ってもよかった)
その電話の意味は、あとで知ることになるのだった。
とうとうカードを切られる
ある日、仕事で疲れて帰宅。
さあ晩ごはん、という時に、いきなり政治的カードが切られた。
「チーちゃん小学生になって、めでたいんよ、ねーぇ」(広島弁)
「今日、ペットショップを見に行ったんだけど。
チーちゃん大喜びで、もう犬にくぎづけで、ぜんぜんはなれんかったんよ、ねーぇ」
「チーちゃん、犬、大好きなんよねーぇ」
と、なんだかわからないが今度はみながねーぇ、ねーぇ、と言い出した。
これにはぼくも
「こちとらナナとチーの面倒見だけでもたいへんなのに、さらにメンドーなことを増やす気ですか」
とささやかな抵抗をしてみたのだが、それ全員スルー。
誰もボールに見向きもせず、そのボールは遠方へ。
「とにかく無事に小学校に入学した。とてもめでたいことだ。
チーはナナとはまったく違って、がんばり屋さんで、保育園でも先生に褒められてばっかりだった。
こんないい子のお願いは、聞いてあげるべきじゃないの」
とかなんとか、ぼくはもう四方八方を囲まれ四面楚歌となった挙げ句、最期はムリヤリのように承諾させられたのだった。
犬を飼うことを知らせると
結局。
「チーちゃん、犬を飼うことに決定したよ」
と言ったら、普段ひかえめのチーが飛び跳ねるように大喜びし、とびっきりの笑顔をぼくにかえした。
ぼくもとびっきりの笑顔をかえしたが、たぶんひきつっていた。
とにかくなんだかんだで犬を飼うことになったふく家。
チー様がご希望される犬様は、「トイプードル」とよばれる種類のものだった。
あの、小さくて茶色でもふもふしたやつだ。
よくわからないが、なんとなくはわかる。
そしていろいろペット屋さんをまわって、一番可愛いのを飼うことにした。
しかし、そのペット屋さんでトイプードルを飼うにはどうしようもなく大変な事になるのであった・・・・・・
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